
インサイドストーリー第2回は昨年ついに形となった奇跡のコラボレーション、ピュアフィッシング/バークレイのガルプ!についてお話していきます。
Gulp!(ガルプ!)とは英語で「がぶ飲み」や「丸飲み」「ガツガツ食べる」の意味です。その単語にビックリマークが付いているので、私たちが釣りの最中によく叫ぶ「喰え!」の意味になるでしょうか(笑)。ガルプ!を既にお使いになった方なら、なんと商品の特徴をよく表したブランド名かと思われるでしょう。今回はバークレイのエンジニア達によって商品化に至るまでに実に20年もの歳月をかけられたガルプ!の秘密の一端を解き明かしていきたいと思います。
このロゴとパッケージがいかにもアメリカンで大好きです。
【ガルプ!との出会い】
今回のプロジェクトを始める前から我々はガルプ!のファンでした。あらゆるワーム素材を試していますが、判断基準はまずもって釣果です。環境負荷の低減への取り組みが急がれますが、それでも釣果が必要なのです。これは環境問題へのアプローチの仕方や考え方だとは思いますが、たとえ生分解性の素材であっても、釣果が伴わなければ広く流通せず、結局はメーカーの自己満足で終わってしまう可能性が大きいからです。
「性能は劣るけど、環境には良いですよ」というのでは、これはお客様の側の意識の問題ではなく、ともすればメーカーの押し付けになってしまいます。今出来ることの一つとして、釣れるワームが結果として生分解性であり、結果として広く流通し、結果として全体の環境負荷が減るということの方が自然で継続的のような気がします。生分解ワームと言えば釣れないワームの代名詞のように言われることもありますが、ガルプ!の登場によって大きく変わりました。
【フィッシング・マラソン?】
ガルプ!はなぜ釣れるのか?ガルプ!のパッケージを見ると「Outfishes live bait」(生エサを凌ぐ釣果)と書いてあります。これは単なる売り文句ではなく、バークレイ社による延べ50日間に渡って4,500匹を釣り上げた実験の結果なのです。調合した全149種類のフォーミュラを全て釣り場で試していく中で、ある1種類の調合が生エサを上回る結果を出したのです。(しかし、4,500匹釣れる釣り場というのも凄いですが、一日あたり90匹釣り続けるというのも凄いですね)。
[ひとくちメモ: 魚の舌と鼻?の豆知識]
パッケージにはもう一つのキーワードとして「400X」と書いてありますが、これは一体何が何に対して400倍と言っているのでしょうか。ここでまず魚の味とニオイに対する反応の仕組みを見てみましょう。
人との最大の違いは、人は陸上で生活し、魚は水中で生活しているということです。つまり人の鼻は空気に触れていて、舌はつば(液体)のある口の中にあります。魚の場合は味覚器官、嗅覚器官ともに水に触れているということになります。感覚器官については伝達の仕組みなどまだまだ分からない部分も多いようですが、魚の味やニオイに対する反応はヒトとは大きく異なっています。
魚は味もニオイも水中で感知し、つまり「水溶性の」物質のみに反応するようにできています。同じ物質(例えばガルプ!のあのニオイ)でもヒトと魚では感じ方が違うようです。同じヒトでも「釣りビト」にとっては良いニオイということになるのと同じでしょうか(笑)。
ちなみにチョウの味覚受容体は前足に、ナマズなどは体表全体にあるそうです。チョウが前足を動かしているのはあれで蜜を味わっているということなのでしょうか。またサケが生まれた川に帰ってくるのはニオイが関係しているとも言われていますね。
嗅覚と味覚はそれぞれ脳とつながり方が異なり、それぞれ別々の行動をつかさどっています。嗅覚は脳の前部につながり、主に餌を探す行動を促進します。例えばバスが魅力的な匂いに出会うと、嗅覚は餌となる対象が近くに存在していることをバスに知らせ、視覚によってその存在を探すという行動に移らせる働きをします。これに対して味覚は脳の後部につながり、餌を口に取り込む行動や、噛むことなどの行動をコントロールしています。もちろん、実際の捕食行動にはさらに視覚や聴覚器官(側線)なども伴います。
【逆転の発想】
ここで話を元に戻しましょう。バークレイ社の化学エンジニアのジョン・プロクノウ氏は次の様に説明しています。
「通常のワームは、魚がエサを見つけるためのニオイの多くを覆ってしまうのです。対してガルプ!は水溶性のナチュラルな成分を使用し、実験によってゲームフィッシュが好んだニオイと味のみを詰め込んでいるのです。そのニオイと味は通常のオイルベースのプラスティックワームの実に412倍の速さで拡散していきます。このことはワーム自体が効果を与えられる空間を大幅に拡大し、市場にある他のプラスティックワームよりも多くの魚をキャッチすることを可能にしてきたのです」。
この拡散の速さが通常のプラスティックワームの412倍!
この臭いの拡散というのは非常に強力で、魚はより遠くから嗅ぎ付けることができます。それはつまり、より多くのバイトのチャンスが得られることを意味し、そして多くの魚をキャッチできることを意味します。つまりガルプ!はより多くの魚をキャッチするための味とニオイがあり、それを素早く拡散するために水溶性マテリアルが必要なのです。極端に言えば、“魚を釣るための生分解マテリアルの採用”とも言うべき、逆転の発想です。こうして前述の魚の感覚器官の仕組みやこうしたガルプ!の特徴を知っておくと、実際の釣りの際の水中のイメージやアプローチの仕方、ルアーの使い方などが少し変わってくるのではないでしょうか。
【ティムコの味付け?】
ティムコオリジナルのラベル
ガルプ!にはデザインをする上で他のワームには無い要素もあります。マテリアルの効果を最大限に生かすための、ニオイの拡散を左右する表面積とアクションです。ティムコが展開するガルプ!のラベルには「味×ニオイ×アクション! ティムコオリジナルデザイン」と書いてあります。「アクション」という言葉を加えたのは我々のこだわりなのですが、ティムコの強力なプロスタッフや開発スタッフのノウハウを注ぎ込んで、本家とはまた一味違ったユニークな提案が出来ればと考えています。
【ガルプ!のヒミツ?】
最近ガルプ!に関して様々な評判を耳にするようになりました。ガルプ!が認知されてきた証拠とも言えますが、中には誤解に基づいた噂などもあるようです。ガルプ!は天然成分のウォーターベース素材から出来ています。ニオイの成分もオーガニックです。それらの安全性にも関わらず、加えてバークレイのラボでは常に魚や環境に対する研究や影響評価も地道に行われています。
環境に関する学問や研究というべきものはまだまだ始まったばかりの領域で、昨日まで良いと思われていたことが実は良くないとなったり、その逆も起こっています。実証が難しい分野であるということもありますが、地球という巨大なシステムの中における影響を数十年の研究で分かろうとするのはやはり難しいのでしょうか。90年代後半に騒がれ始めた石油系プラスティックの可塑剤についてさえ、一部の合成エストロゲンなどとは違い、ホルモンを撹乱させるか否かの科学的な実証は実は成されていないのが現状です。しかし学問というのはそうした議論の時代を経てやがて一つの結論へとたどり着くものです。浮き足立つことなく、落ち着いた対応が必要だということでしょうか。
【ガルプ!の進化】
ガルプ!マテリアルと一口に言っても、その中身はバークレイのラボで日々進化し続けています。成型の精度もかなり上がり、通常のプラスティックワームと比べても遜色のない細かい形状が可能になってきています。また素材感も向上し、初期のものとは比べ物にならないぐらいの絶妙な触感も出せるようになっています。また密かに開発が進められてきていたクリアー系のカラーも今後登場してきそうです。これからのガルプ!、そしてティムコオリジナルデザインの展開にご期待ください。
※文中のデータはピュアフィッシング社様よりご提供いただきました。
開発課:姫野